中島弘恵(p)、伊東里栄子(b)、安永春美(ds)の三人による<鳥尾さん=TRIO 3>のデビュー作品。2004年3月7日、東京録音。学芸大学・ジャズ研究会で1999年に誕生した女性ばかりのピアノ・トリオ・グループ。
いままで「ヴィーナス・レコード」が推し進めてきたフォービート・ジャズの路線上でも最右翼に位置するビバップ~ハードバップなピアノ・トリオの演奏だ。ピアノの中島がアイドルとするのは、ウイントン・ケリー、ソニー・クラーク、フィニアス・ニューボーンといった50年後期から60年代中期にかけて一斉を風靡したピアノのアイドルたちだ。
いずれも「正しいジャズファン」なら、必ずいつかは通り過ぎる道にある典型的なジャズの形を持ったミュージシャンたちばかりだ。
ここに演奏されているのは、そうした時代の豊穣なジャズの魅力、そして、“スイングしなけりゃ意味がない”といった感覚に裏打ちされた演奏だ。
ここに凝縮されたジャズの魅力を未体験だとしたら、まだ、ジャズの楽しみを半分も体験していないことは確実だ。50年代アドリブ一発に青春をかけた多くのミュージシャンたちと同じジャズへの熱い思いが凝縮したアルバムだ。
“ジャズは過程の音楽だ”は、日本がジャズ史上に唯一その名を刻む秋吉敏子の言葉だが、そうした意味でもここには三人の情熱がいっぱいに詰まっている。
それにしても徹頭徹尾凄いパワーで押しまくる。いまや珍しくなったシンコペートされた普通のフォービートが懐かしい。
野本晴美の待望のデビュー・アルバム。日本有数の重い音を持ったベーシスト、塩田哲嗣(のりひで)(b)、トミー・キャンベル(ds)によるトリオ(2002-6-23録音)と、俵山昌之(b)江藤良人(ds)のトリオの二つのトリオ(2002-7-1録音)の演奏が収録された。