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SACDに特化した偏屈ブログ

ヘルシンキ室内合唱団によるフィンランド「モダニスト」作曲家ふたりの合唱曲集

Choral Works By Antti Auvinen And Sampo Haapamäki

アンティ・アウヴィネン、サンポ・ハーパマキの合唱作品
ヘルシンキ室内合唱団 、 ニルス・シュヴェケンディーク

タワーレコード

 

ヘルシンキ室内合唱団は、2007年にニルス・シュヴェケンディークが芸術監督に就任して以来、以前にも増して意欲的な活動をつづけてきました。コンサートとともに録音活動も積極的に行い、タピオ・トゥオメラの作品集『呪文』(Alba ABCD300)、『エーリク・ベリマン 合唱作品集 1936年-2000年』(BIS-2252)、フィンランド大公国時代の合唱曲集『春がやってくる』(BIS-2442)、ペルットゥ・ハーパネンの作品集『報告』(BIS-2452)といった幅広い時代のレパートリーを歌ったアルバムは、フィンランド国内と海外で高い評価を獲得しました。新しいアルバムでは、1970年代生まれの世代をリードするフィンランドモダニスト」作曲家ふたりの合唱作品を歌っています。

サンポ・ハーパマキ(1979-)は、「微分音とスペクトル音楽」の作曲家と呼ばれ、管弦楽や器楽のための作品を主に手がけてきました。《ワールドランド》は、ヘルシンキ室内合唱団から委嘱され、彼が初めて「声の音楽」に挑んだ作品です。「民族主義者と世界主義者、保護貿易論者と国際主義者という、世界の見方の間に生じる緊張」の探求を背景に「16人の独唱者とサウンドファイルのため」に作曲。自身の書いた「超現実主義」詩『Aistit(感覚)』をテクストに使い、パーシウスの《フィンランド国歌》、キルピネンの《国旗の歌》、クレスの《ポリ連隊行進曲》、シベリウスの《フィンランディア賛歌》、そしてカール・オルフの《カルミナ・ブラーナ》の〈おお運命の女神よ〉を断片的に引用。歌い手たちによるさまざまな言語も飛び交う、7楽章、約40分の音楽に作り上げました。

マルチメディアによる音楽創造に関心を寄せるアンティ・アウヴィネン(1974-)は、「騒々しい」要素を作品に欠かせない音楽言語として使い、「楽音と騒音の境界」の探求に挑むことで知られます。「声楽外」の仕掛けの加えられた《On,-ne,-ni》は、彼のスタイルが明確に示された曲のひとつです。「幸福」「幸運」を意味するフィンランド語「onneni」による言葉遊びがタイトル。実験性と遊び心のある言葉使いで知られるヘンリーカ・タヴィ(1978-)の詩と、フィンランド語文学の生みの親と言われるアレクシス・キヴィ(1834-1872)の詩の断片によるテクストが、8人の歌手のアンサンブルで歌われます。《見るからに外国の歩兵隊》は、2017年、第一世界大戦記念の委嘱作として作曲されました。兵員募集ポスターや『ダダ宣言』などから採った多種雑多な言葉をテクストに使った約12分の作品。このアルバムでは、「混声合唱版」ではなく「16人の独唱者のための版」が歌われます。
キングインターナショナル

 

【曲目】
サンポ・ハーパマキ(1979-):
Maailmamaa(ワールドランド)(2010)(16人の独唱者とサウンドファイルのための)

アンティ・アウヴィネン(1974-):
Obviously Foreign Infantry(見るからに外国の歩兵隊)(2017)(16人の独唱者のための)
On,-ne,-ni(2010)(8人の歌手のための)

【演奏】
ヘルシンキ室内合唱団
ニルス・シュヴェケンディーク(指揮)

【録音】
2017年6月8日-9日(Maailmamaa)、10月20日(Obviously)、2018年6月10日(ON)
ニューパヴィリオン(Uusi paviljonki)(カウニアイネン、フィンランド)

制作・録音・編集:ハンス・キプファー