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北欧のおとぎ話の美しくも狂気をはらんだ不思議な世界に入り込むようなアルバム クリスチャン・グローヴレン「おとぎ話 eventyr」2L

おとぎ話 eventyr
クリスチャン・グローヴレン

タワーレコード

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ノルウェーの人たちは"eventyr"という言葉を聞くと、おとぎ話、冒険談、民話、幻想物語といったことを思い浮かべると言います。ノルウェーのピアニスト、クリスチャン・グローヴレンは、このアルバムで、トヴェイト、シンディング、フールム、グリーグの作品を弾きました。「彼らの、狂気じみていたり、美しかったり、悲しみと喜びにあふれ、魔法と愛がいっぱい『物語』と向き合っていること、それ自体が冒険の物語だった」と彼は語ります。「故郷に帰ったような気分だ」。

ゲイル・トヴェイト(ガイル・トヴァイト)(1908-1981)の《風神の竪琴》は、イェールハルド(ゲルハール)・ムンテの絵からインスピレーションを得て作曲された作品です。「…翼をつけた竪琴が、荒れる海を渡ってゆく、空高く、煌く星を弦(つる)にのせて」。フランス印象主義、とりわけラヴェルの《夜のガスパール》の影響が明らかな手法で書かれた、「険しい崖、深いフィヨルド、荒れた天気、そして、雲間から差し込む光がなによりも美しい、ノルウェー西岸を想起させる音楽」(グローヴレン)。手稿譜の日付は「1945年6月22日」。トヴェイト自身の1949年の録音(Simax PSC1805)は、彼の「私的」な版で演奏されたため、初稿を弾いたこの演奏がこの作品の事実上初めての録音です。

クリスチャン・シンディング(1856-1941)の《ピアノソナタ ロ短調》は、1909年の作品です。シンディングの特徴が顕著に表れ、「《春のさざめき》という、たったひとつの作品でほとんどの人に知られている」彼の代表作のひとつとされています。「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」「アンダンテ」「ヴィヴァーチェ」の3楽章の構成。この作品をグローヴレンは、この作品を「シンディングの吠え声」と呼び、「私にとっては、ヴァイキング船、大きく膨らんだ帆、ヴァイキングたちの略奪と英雄的な行動という『サガ』のスタイルの作品」と語っています。アルフ・フールム(1882-1972)も、トヴェイトと同様、フランス音楽の影響を受けたひとりです。1920年の《おとぎ話の国》は、妖精やトロルなどノルウェーの伝説を題材にした作品で知られるテオドール・キッテルセンの絵画に通じる雰囲気をもち、画家でもあったフールムの「音の描画」と呼べる作品です。

エドヴァルド・グリーグ(1843-1907)の《バラード》は、1876年春、彼がさまざまな苦難をかかえていた時期に作曲されました。悲しい音調のヴァルドレスの民謡《北国の農民》を主題にした「変奏曲」の形式で書かれ、技術的、表現的なチャレンジと「冒険」を克服してはじめて、聴き手の心をとらえる輝かしい音楽として示される作品です。グローヴレンをはじめとする多くのピアニストたちから、ノルウェーのピアノ音楽でもっとも重要な作品とみなされています。

クリスチャン・グローヴレン(1990-)は、ベルゲン生まれ。イジー・フリンカに教わった後、ノルウェー国立音楽大学でホーヴァル・ギムセとラーシュ・アンデシュ・トムテルに学びました。ウィーン国立音楽大学に留学、王立デンマーク音楽アカデミーではイェンス・エルヴェケーアのソリスト・クラスで学んでいます。
ノルウェー国内の「青少年音楽コンペティション」には三度出場、第1位をソリストとして二度、室内楽奏者として一度獲得。ベルゲン・フィルハーモニックと共演した2007年の回には「聴衆賞」に選ばれました。『おとぎ話』は、配信だけの『Bach - Inside Polyphony』(2L139)に続く彼のアルバム第2作です。グローヴレンが29歳だった2019年11月、ソフィエンベルグ教会でセッション録音されました

【曲目】
ゲイル・トヴェイト(1908-1981):風神の竪琴(1945)
クリスチャン・シンディング(1856-1941):ピアノソナタ ロ短調 Op.91(1909)

アルフ・フールム(1882-1972):おとぎ話の国 Op.16
[魔法にかけられた庭で/王女さまが金のリンゴで遊んでいる/三匹のトロル/雪やこんこん/鬼の宴/オーロラの娘たち]

エドグリーグ(1843-1907):バラード ト短調 Op.24(1875-76)

【演奏】
クリスチャン・グローヴレン(ピアノ)

 

【録音】
2019年11月
ソフィエンベルグ教会 (オスロノルウェー)

制作・バランスエンジニアリング・ミクシング・マスタリング:モッテン・リンドベルグ
編集:ヨルン・シメンスタ、モッテン・リンドベルグ

 

 

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