1・チュニジアの夜
2・オパス・デ・ファンク
3・カンタローブ・アイランド
4・思い出の夏
5・クレオパトラの夢
6・誰かが私をみつめてる
7・ビギン・ザ・ビギン
8・フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン
9・愚かなりわが心
10・サヴォイでストンプ
11・君を想いて
「ブルーノート東京」にて健在ぶりを発揮した翌々日のパフォーマンスで、よもやこういう形でリリースされるとは製作者・関係者も思いもよらなかったであろう。
現在ジャズ・シーンでのトップ・トランペッター
流石はSACD、DSDレコーディングとの思いをかみ締めるトランペットの音色が最高だ。ロイは5「クレオパトラの夢」にも参加。エモーショナルなプレイ、音色はハンクとの相性抜群で、クァルテットでのフル・アルバムも期待・・・それはもう出来ないわけだが・・・
3「カンタローヴ・アイランド」10「サヴォイでストンプ」ではティファニーのアルバムにも参加していたテナー・奏者
レイモンド・マクリーンが参加。3はハービー・ハンコックのジャズ・ロック系ヒット曲。レイモンド、ハンク、そしてドラムの
リー・ピアソンの各ソロが実にカッコいい。
10はスイングの定番曲。軽快で愉快で心躍る曲。
レイモンドのテナーはスマート。バリバリのスタンダードが古臭くならない良さがある。
トリオ・プラスがアルバムにアクセントを付けていて、全体が引き締まる感が良い。
紹介が遅れたが、べーシストは初代グレート・ジャズ・トリオのロン・カーターの愛弟子デイヴィット・ウォン。
グレート・ジャズ・トリオといえばミスター・スタンダードのハンクに意外性のあるリズム隊が特徴で、近作ではオマー・ハキムなどポップス畑で活躍するドラマーが起用されたりと面白かったが、人によっては「喧しい」と感じたかも知れない。今回のピアソンとウォンはジャズ然としたプレイで相性が良いように思う。前作の「ブルー・マイナー」でのジョージ・ムラーツ、ビリー・キルソンのコンビとはハンクのノリの良さが目立ったが、今回のしっとり感もまた良い。
トリオでのハイライトは個人的に好きな曲というのもあるだろうが
8「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」。ロマンチックで切なくて、この曲の定番テイクになりそうだ。
ノリの良い3の後に来るバラードの4「思い出の夏」もグッとくる。前曲との落差のある暗い曲調とウォンの弓弾きが哀愁を際立たせる。
ラストを飾るのはハンクのソロで「君を想いて」・・録音順は分からないが、アルバムとしてはハンクが私たちに送る最後の曲である。それが「君を想いて」なんてタイトルで泣けてきます。
ハンクのプレイはド派手な速弾きなんて無い、あくまでスタンダード。それだけに一聴して引き込まれるというのは、特に若い人には稀かも知れない。しかし、それだけに何度も聴く度に味わいが増し、飽きないどころかそれが自分のスタンダードになる。それこそがハンクが”ミスター・スタンダード”と呼ばれる所以だ。ジャズ・ファンは勿論ですが、初めて聴く人にもお薦めできる快作だと思います。
プロデューサーは
ご存知、伊藤八十八。トニー・ウィリアムス、アート・ファーマー、トミー・フラナガン、エルヴィン・ジョーンズ、ボブ・バーグ、マックス・ローチ・・・ジャズ・レジェンドの生前最後のレコーディングを手掛けてしまう”ミスター・ラスト・レコーディング”の異名をまた頂戴してしまった。。
レコーディング・エンジニアはYOSHIHIRO SUZUKI。アシスタント・エンジニアはMOTOHIRO NOGUCHI
マスタリング・エンジニアはKOJI SUZUKI
今回もSACDクオリティに違わぬ素晴らしい録音、音質。「音匠仕様レーベル・コート」でより良い形を目指した物になっている。最新のDSDレコーデング、SACD Hybrid、音匠仕様と現在一番拘りとリスナーの再生環境に配慮した形式。
追悼企画”メモリアル”未発表曲集