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【LSO新譜】サー・コリン・デイビス ヴェルディ:オテロ

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巨匠デイヴィス&LSO/ヴェルディ:『オテロ
驚異的エネルギーで描き上げる白熱のドラマ

長年にわたるイギリス音楽の普及と若い世代に向けた音楽教育の関わりへの多大なる貢献が認められ、女王陛下より2009年度のクィーンズ・メダル・フォー・ミュージックを叙勲されたコリン・デイヴィス。「LSO Live」2010/11年シーズン最初のリリースは、ヴェルディの『オテロ』。その晴れがましいニュースが初めて公表された機会に、巨匠率いるLSOによってコンサート形式で上演されたプログラムです。


ヴェルディの最高傑作『オテロ』】
前作『アイーダ』以来16年ぶりの新作となった『オテロ』は、シェークスピアに対するヴェルディの生涯にわたる愛情が究極の悲劇として開花したオペラ。ボーイトの台本による物語はひとくちにいって、イヤーゴの奸計にはまり疑心暗鬼に陥った英雄オテロが、最愛であるはずの無実の妻デズデモナを手にかけた挙句に、自らも命を絶つというもの。ここに描かれるのは、嫉妬、偽善、狡猾、憎悪、猜疑、卑劣のほか、およそ思いつくかぎりの、どうしようもなく抗いがたい人間の負の感情。ほとんど悲劇ばかりを手がけてきたヴェルディに、こうした負の側面や、苦悶する人間の心理を書かせたら天下一品。全編無駄なく激情の音楽がギッシリ詰め込まれています。なかでも第2幕幕切れの『オテロとイヤーゴの二重唱』や、第3幕第1場の『オテロのモノローグ』など、ヴェルディ最後の悲劇オペラにふさわしくオーケストラの表現力も破格。そのためか、かのカルロス・クライバーを筆頭に、ふだんはヴェルディを取り上げない指揮者も別格の扱いをする『オテロ』は、ヴェルディのみならず、ひいては「『オテロ』こそオペラ史上の最高傑作」との呼び声も高い完成度を誇る作品として知られています。

【コヴェント・ガーデン時代のデイヴィスによる『オテロ』】
デイヴィスにとって『オテロ』とは、そもそもコヴェント・ガーデンの音楽監督時代(1971-1987)にもたびたび取り上げているこだわりのレパートリー。記録によると、デイヴィスはロイヤル・オペラ・ハウスによるプロダクションとして、1972年にジョン・ヴィッカースを表題役に立てて1公演、1980年に再度ヴィッカースで1公演、1983年にはプラシド・ドミンゴオテロを歌い3公演を全曲上演しています。この間ほかにもコヴェント・ガーデン歌劇場管とともに、1977年にオテロドミンゴ、デズデモナにマーガレット・プライスを迎えてガラ・コンサート形式で上演しています。
 デイヴィスはコヴェント・ガーデン歌劇場管と、1978、1979年に『仮面舞踏会』を、1980年に『トロヴァトーレ』をともにセッション録音していますが、あいにく『オテロ』についてはチャンスがありませんでした。


【手兵LSOとの顔合わせによる『オテロ』】
1995年にLSO首席指揮者に任命されたのち、さらにデイヴィスは1999年にもLSOと『オテロ』をバービカンにおいてコンサート形式で取り上げ、このときはホセ・クーラをオテロに迎えています。
 このように『オテロ』に情熱を傾けてきたデイヴィスですが、「LSO Live」における2004年収録の『ファルスタッフ』(LSO0528, 0055)や、あたらしいところでは2009年1月のヒコックス追悼演奏会における『レクィエム』(LSO0683)でも示して明らかなように、ここに至る巨匠のヴェルディへの適性を疑う余地などないでしょう。それにしてもここでのデイヴィスはとても82歳とは思えぬ、驚くべき白熱ぶり。それもエネルギーの爆発にみせる凄まじさは、人間のむき出しの感情を表現し尽くしてなお余りあるものがあります。
 巨匠デイヴィスがようやく初レコーディングを実現した『オテロ』。各紙レビューですでに報じられている内容からも圧倒的な手ごたえを約束してくれるものとおもわれます。


【センセーショナルな“オテロ”デビューを飾った注目株オニールほか歌手について】
タイトルロールのサイモン・オニールは、1971年ニュージーランドのアシュバートン生まれ。ドミンゴの代役として『ワルキューレ』のジークムントでMETデビュー。以降、ジークムントを当たり役として、パッパーノ指揮のコヴェント・ガーデンやラニクルズ指揮のMET、最近も2010年6月のフィリップ・ジョルダン指揮のバスティーユ・オペラで起用され、国際的な舞台での評価を急速に上げているといいますから、ドラマティックな歌唱が決め手となるオテロの資質にも十分期待がもてそうです。ちなみに、本公演はドミンゴオテロを師事したオニールにとってオテロ・デビューとなるもので、2012年にはスカラ座バレンボイム指揮でも当役を歌うことが決まっています。
 イヤーゴを心憎いほどに演じ切ったジェラルド・フィンリーは1960年モントリオール生まれ。シューベルトシューマンのリートでのこまやかな性格的歌唱も冴えるカナダのバリトンです。異色のキャスティングといえるのが1967年ルール地方ゲルゼンキルヒェンに生まれたドイツのソプラノ、アンネ・シュヴァネヴィルムス。ワーグナーやシュレーカー、ことにR.シュトラウスものでは不動の地位を獲得しているシュヴァネヴィルムスもヴェルディは未知数でしたが、聴かせどころの第4幕『柳の歌』では完璧な美しさを披露。ほかではともに英国出身で若手イケメンのテノールふたり、アラン・クレイトンとベン・ジョンソンも存在が光っていました。


【当夜のレビューから】
「オニールは、本物のトランペット・トーンの最高音の声を備えており、また、あらゆる真の戦士のように怖れを知りません。ドミンゴをふくむ、この役どころのひじょうにおおくの名歌手たちは、バリトン寄りのヘルデンテノール・タイプで固められているので、ひとりの若い歌手が最高音をまちがいなく決めるのを聴くことは、興奮はしなかったけれども、斬新でした。(中略)じっさい、オニールが細心の注意を払い、表情ゆたかにテキストを扱ったことで大詰めの場面でほんとうに胸がいっぱいになりました。」インディペンデント紙
「サイモン・オニールは表題役ですばらしいデビューを果たしたことで、最近10年間に出てきたヘルデンテノールのなかでも最高の歌手であることを世に知らしめた。初舞台を踏んだもう一人、ジェラルド・フィンリーは際立って明快で蛇のようにもっともらしいイヤーゴであった。」デイリー・テレグラフ
「ここでの真の『ヴェネチアの獅子』はコリン・デイヴィス卿であった。つまり、バービカンの舞台から爆発したヴェルディの『オテロ』初めの強大な嵐のように、40歳かそこらに振舞う80歳かそこらであり、どこからみても最高司令官だった。」インディペンデント紙
「演奏全体は興奮させるものでした。久しくコリン・デイヴィス卿はわたしたちの音楽人生の中心に留まりつづけるかも知れません!」クラシカルソース・ドットコム(キングインターナショナル)

【収録情報】
ヴェルディ:歌劇『オテロ』全曲
 サイモン・オニール(T オテロ
 ジェラルド・フィンリー(Bs-Br イヤーゴ)
 アンネ・シュヴァネヴィルムス(S デズデモナ)
 アラン・クレイトン(T カッシオ)
 ベン・ジョンソン(T ロデリーゴ)
 アレクサンドル・ツィンバリュク(Bs ロドヴィーコ
 マシュー・ローズ(Bs モンターノ)
 ルーカス・ヤコブスキ(Bs 伝令)
 エウフェミア・トゥファーノ(S エミーリア)
 ロンドン交響合唱団(合唱指揮:ジョセフ・カレン)
 ロンドン交響楽団
 サー・コリン・デイヴィス
(指揮)

 録音時期:2009年12月3,6日
 録音場所:ロンドン、バービカン・センター
 録音方式:DSDレコーディング(ライヴ)
 プロデューサー:ジェイムズ・マリンソン
 エンジニア:ジョナサン・ストークス、ニール・ハッチンソン
 SACD Hybrid
 CD STEREO/ SACD STEREO/ SACD 5.1 SURROUND
 
 
 
London Symphony Orchestra & Sir Colin Davis
 
 
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