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SACDに特化した偏屈ブログ

カレル・アンチェル チェコ・フィル スプラフォン名盤復刻特集

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カレル・アンチェル  Karel Ančerl
 
1908年4月11日生まれ。4月5日生まれのカラヤンとは数日違いの同い年で、共に今年生誕110周年。しかしながら知名度には大きな開きがある。
 
抜きん出た音楽的才能と圧倒的カリスマ性、ただ音楽を演奏するだけでなく、ビジュアルやプロデュース力にも長け、最先端録音技術・映像技術を用い多数の録音と革新的映像を残し、自家用ジェット機やスポーツカーを乗り回す等、名誉と富を得て「帝王」に君臨し続けたカラヤン。戦時中はナチス党員であったり、権威主義、利益主義と批判されアンチも多かったとは言え、音楽界・クラシック界にもたらした多大なる功績は誰しもが認める所だろう。
 
一方のアンチェルグスタフ・マーラーが生まれた場所にも近いボヘミア地方出身(現在のチェコ南部)で、裕福なユダヤ人家庭に生まれ育つ。1933年にプラハ交響楽団音楽監督に就任するが、1939年ナチスチェコを併合後、ユダヤ人であったアンチェルアウシュヴィッツへ送られ、両親と妻子はガス室で殺される。アンチェルのみが奇跡的に生還し、戦後楽壇に復帰、1950年にチェコフィル首席指揮者に就任。傾いていたチェコフィルを立て直し、1959年の来日では同時期に来日公演を行ったカラヤン&ウィーンフィルに勝るとも劣らない名演で喝采を浴びる。
しかし、1968年演奏旅行中に起こった”チェコ事件”(チェコ民主化運動「プラハの春」に対するソ連を中心としたワルシャワ機構軍の軍事介入)により亡命を余儀なくされる。1969年小澤征爾の後任でトロント交響楽団の常任指揮者に就任。1973年トロントにて死去。
 
華麗なるカラヤンと悲劇のアンチェル。対照的とも言える二人の人生。
 
悲劇に見舞われながらも、音楽を捨てなかったアンチェル。あるいは彼には音楽しかなかったのかも知れない。
平和な世、国に生まれ、一鑑賞者にすぎない単なる「音楽好き」でしかない私に、音楽とは芸術とは、そして平和とはを再考させてくれる存在でもあります。
 
 
数多くの名盤がSACD化されているカラヤンですが、アンチェルは昨年まではわずか3枚(スメタナ「我が祖国とドヴォルザーク新世界より」シングルレイヤーどちらも現在入手困難。それとTBS音源の日本公演録音盤Amazon タワーレコード)。しかし今年に入り、タワーレコード企画でチェコフィル時代のスプラフォンの名盤がSACDシリーズ化しています。
 
スプラフォンのオリジナル・アナログ・マスターからDSD変換されたものをDXDにてリマスタリングされDSDに再変換された音源が使用され、緑色の盤面で所謂「音匠仕様」。リマスタリング・エンジニアは毛利篤(日本コロムビア
 
アンチェル・ファンは勿論、アンチェルの名さえ初めて聴く方にも是非とも聴く切っ掛けになって欲しいSACDシリーズ。今後のリリースにも期待です
 
 

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ドヴォルザーク交響曲第9番新世界より交響曲第6番、序曲「自然の王国で」、序曲「謝肉祭」、序曲「オテロ、序曲「わが家」
 

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スメタナ:連作交響詩「わが祖国」
 

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メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲、ブルッフ:ヴァイオリン協奏曲第1番、ベルク:ヴァイオリン協奏曲
 
 

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ブラームス交響曲第1番、2番、ヴァイオリンとチェロのための協奏曲、悲劇的序曲、ベートーヴェン:序曲「レオノーレ」第3番

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ラロ:スペイン交響曲ラヴェル:ツィガーヌ
 
 
 

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マーラー交響曲第1番「巨人」第9番
 

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バルトーク:管弦楽のための協奏曲 ドヴォルザーク:劇的序曲≪フス教徒≫ ムソルグスキー:交響詩≪はげ山の一夜≫
 管弦楽名曲集
 
 
 
 
アンチェルの音楽は優しい。
気品があって、そつがなく、まるで世界を達観したように明るい。
マーラーの『1番』やショスタコーヴィッチの『5番』やストラヴィンスキーの『春の祭典』のような曲を演奏しても、決して下品にならず、しかも聴くものを退屈にさせない。
「クラシックは死なない あなたの知らない新名盤」松本大輔著より

チェコ・フィルの初来日(1959年秋)のおり、
宿舎の赤坂プリンス・ホテルを訪ねて話を聞く機会があったが、
温厚でいかにも苦労人らしい風貌と、
話が第二次大戦中の受難、とりわけ家族が自分を除いて全員虐殺されたくだりに及んでも、にこやかな微笑さえたたえた笑顔を少しも変えずに、 ゆっくりした英語で淡々と語っていたのが忘れられない
演奏家別クラシック・レコード・ブックVol.1指揮者篇」レコード芸術・別冊より、カレル・アンチェルの解説佐川吉男氏から。