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SACDに特化した偏屈ブログ

ジャン=ギアン・ケラスと18人の音楽家による異文化交流アルバム『遊牧の民(Nomaden)』

Nomaden -Sacd-

ヨエル・ボンス:遊牧の民
ジャン=ギアン・ケラス エト・スパンヤールト アトラス・アンサンブル

 

 
ジャン=ギアン・ケラスがBISデビューです。これは嬉しいですね。かつてハルモニアムンディからSACDリリースがありましたが、すぐに売り切れで高騰、私も手にする事が出来ませんでした。内容も興味深く(一般受けしなさそうですが・・笑)期待です
 
もはや押しも押されぬ世界的チェリスト、ジャン=ギアン・ケラス。バロックから現代作品、さらには「トラキアの音楽」プロジェクトでの異文化奏者たちとのコラボレーションと、おそるべき精確さと知性で圧巻の演奏で世界を魅了しています。

このたびBISから登場するのは、『遊牧の民(Nomaden)』と題した、ケラスと18人の音楽家による異文化交流アルバム。
主人公(ケラス)が、様々な土地で、様々なバックグラウンドを持つ18人の音楽家と「出会い」、彼らと対話をする、という旅の物語です。
チェロとアンサンブルの協奏曲なのではなく、むしろチェロと、異文化のソリストたちのためのコンチェルタンテ(複数の楽器が<対抗>的に用いられる)的作品です。
序奏につづき、11のパサージュと様々な土地の音楽を思わせる25の楽曲が並び、エピローグで幕となる全38楽章から成ります。
この「遊牧の民」は、アムステルダム・チェロ・ビエンナーレの委嘱を受け、ジャン=ギアン・ケラスとアトラス・アンサンブルのために作曲されたものです。2016年10月28日に初演され、この初演時の録音(および11月5日のセッション録音)をディスク化したのが当盤。

チェロと二胡によるミニマル・ミュージック的なパッセージの丁々発止のかけあい、インドの擦弦楽器サーランギーとチェロの微分音合戦など、ケラスと様々な楽器の世界的奏者たちによる演奏は実に刺激的。これらの高難度の楽曲はケラスだからこそ実現可能だったのだろうと思わずにはいられません。

アトラス・アンサンブルは、中国、日本、インド、イラン、アゼルバイジャンアルメニア、トルコとヨーロッパ各地で、その土地特有の楽器を演奏している奏者たちによって結成されています。

全篇を通じてボンスによる書き下ろし作品から成り、伝統音楽は挿入されません。ボンスはアトラス・アンサンブルと実に14年にわたりコラボレーションしており、この作品はいわばその総決算といえるもの。
アンサンブルの中には西洋音楽の楽譜はまったく読めないが素晴らしい即興をする奏者もいれば、西洋音楽の楽譜はどんなに難しいものでも演奏するが即興はあまりしない、という奏者もいます。
こうした彼ら一人一人の可能性を超越した領域で、すべてのメンバーが音楽を展開する、というのがボンスのねらいです。ケラスと世界トップ奏者たちによる丁々発止のアンサンブル、聴き逃せません!
(キングインターナショナル)

『遊牧の民(Nomaden)』
【曲目】
ヨエル・ボンス(1952-):遊牧の民(Nomaden)
~チェロと異文化交流大アンサンブルのための(2015-16)「チェロと異文化交流大アンサンブルのための38楽章のバラエティ豊かなモザイク」
【演奏】
ジャン=ギアン・ケラス(チェロ)
アトラス・アンサンブル
エド・スパンヤード(指揮)

[アトラス・アンサンブルのメンバー]
【管楽器】
ドゥドゥク(アルメニア)/ラファエラ・ダンクサグミュラー
シェン(笙)(中国)/ウー・ウェイ
笙(日本)/佐藤尚
尺八(日本)/ハリー・スターレヴェルド
撥弦楽器
セタール(ペルシャ)/キヤ・タバッシアン
タール(コーカサスから中東)/エルシン・ナギジェフ
擦弦楽器
二胡(中国)/シャオ・ユアンチュン
ケマンチェ(イラン、コーカサス)/エルシャン・マンスロフ
ヴァイオリン/アンゲル・ヒメノ
ケメンチェ(トルコ)/ネヴァ・オズゲン
サーランギー(インド、ヒンドゥスターニー音楽)/ドゥルバ・ゴーシュ
コントラバス/ダリオ・カルデローヌ

【録音】
2016年10月28日、11月5日
アムステルダム・ムジークヘボウ

制作:ヨエル・ボンス、グイド・ティヘルマン
録音:グイド・ティヘルマン