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SACDに特化した偏屈ブログ

2011年注目新譜その2

 
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巨匠デイヴィスがLSOを率いてあらたにスタートさせる、ニールセンの交響曲全曲シリーズ。注目の第1弾は全6曲中、もっとも有名な第4番『不滅』と、最高傑作の呼び声高い第5番という組み合わせです。

シベリウスに匹敵する20世紀の北欧を代表する交響曲作家ニールセン】
LSO Liveをふくめ、じつに3度の交響曲全集録音を完成させた「シベリウスのエキスパート」デイヴィスが、次なる目標として掲げるニールセン。シベリウスとは同じ1865年生まれで、また、母国が北欧のデンマークということでしばしば比較されるニールセンですが、ともに20世紀を代表する交響曲作家でありながら、それぞれの音楽と手法もまた等しく独特なもの。そのニールセンの交響曲のなかでも、際立って著しい特色を示す作品が第4番と第5番であり、様式上いずれも明確な調性が記されないことに加えて、伝統的定型の4楽章から離れ、第4番が単一楽章構成、第5番が2楽章形式を採用しているのも第3番までとは大きく異なるところです。

【ニールセンの個性がもっとも顕れた交響曲第4番&第5番】
「このタイトルのもと、作曲家はただ音楽だけが最大限に何を表すことができるのかを一語で示そうとした。その答えとは生命の本質的な意志であり、音楽は生命で、そしてそれに似て滅ぼし得ざるものである。」
 折りしも第1次大戦の勃発に揺れる1914年の夏に作曲に着手したことも背景にあるのでしょう。ニールセンは、「滅ぼし得ざるもの」という副題を与えた第4交響曲のテーマを、スコアの冒頭にこのような注記を加えて、エラン・ビタール(進化する生命の躍動)、生きるための消し去り難い意志であると述べています。
 サブタイトルもユニークながら、ニールセン屈指のこの劇的な作品といえば、とくに有名なポイントが2群のティンパニ間で繰り広げられる壮絶なバトル。じっさい、当アルバムでもナイジェル・トーマスとサム・ウォルトンによる白熱のやりとりは大きな聴きどころのひとつとなっています。
 いっぽう、第1次大戦終結してから程無い時期、ニールセンが第5交響曲を手がける頃になると、生命の不滅に対するかれの信頼はおおいにぐらつくことになります。これには彫刻家である妻アンネ・マリー・ブローデルセンとの夫婦関係が危機を迎えていたことも関連しているといわれていますが、ニールセンはルートヴィヒ・ドレリスに宛てた言葉のなかで、第5交響曲を「闇と光の分割、善と悪との戦い」の探究であると述べています。また、ニールセンの専門家でもある作曲家ロバート・シンプソンは第5番を「これは人間の闘争を表している」と述べ、いみじくもサイモン・ラトルが「第4番以上に戦争交響曲にふさわしい」と述べたように、ここでは全篇にわたり軍楽調のスネア・ドラムが効果的に用いられているのが特徴的。
 タンタカタッタタというリズムに導かれて、次第に大きく異様な暗雲が曲全体に立ち込めてゆくかとおもえば、突如、うつくしく抒情的な部分へ転換したりと謎めいて先の読めない第1楽章、いっそうの複雑と混沌を極める第2楽章も、カタルシスを得られるのか得られないのかわからないうちに壮大に終わるところなど、かえってこの作品が並みの解釈を受けつけない高みと独創性を備えた内容であることの証のように思われます。

【デイヴィス念願のニールセン・プロジェクト】
「ニールセンは強迫観念にとり憑かれていて、本当に執拗なのです…シベリウスよりはるかにずっと狂気を孕んでいるのです」
 インタビューでニールセンについてこのように述べ、シベリウス同様に長年、ニールセンの音楽を激賞してきたデイヴィスですが、意外にもこれまでほとんどどんな作品も指揮してきませんでした。それだけに、このたびの交響曲全集プロジェクトにかける意気込みも一入といったところでしょう。
 いま、とてつもなくパワフルな最高の手兵LSOを得て、デイヴィスがようやく83歳にして初めて取り組むニールセンのプロジェクト。デイヴィスの熱くひたむきな思いもまたまさに“消しがたきもの”にほかなりません。

【演奏のレビューから】
「ニールセンの音楽は、LSOのために書かれたとおもっていいかもしれません。つまり、オーケストラの強靭なサウンドと自由な精神のテンペラメントは、このシンフォニーにおける名手の要求と本能的なダイナミズムとに適っているからです。デイヴィスもまた、ベートーヴェン流の対立の構図をニールセンの音楽に見出しています。デイヴィスは、シンフォニーのタイトル、“滅ぼし得ざるもの”に値するヴァイタリティで、作品を指揮しました」-フィナンシャル・タイムズ
「(交響曲第5番は)ほとんど聞き取れないものから非常に大きな音まであらゆるダイナミックレンジを示し、広範囲にわたる音色を提示します。オーケストラの各セクションには見せ場が用意されていますが、けれども第1楽章を通してずっと絶え間なく続くスネアドラム・ソロ(ニール・パーシーが勇気と賞賛に値する技術で示した)と、同じく終結部での美しいカデンツァ風のクラリネット・ソロ(アンドルー・マリナーによってみごとに奏でられた)とはおそらくもっとも忘れられない瞬間です。サー・コリン・デイヴィスは、このうえなく献身的な取り組みと興奮のパフォーマンスという点で秀でていました。」-ミュージカルクリティシズム・ドット・コム(キングインターナショナル*一部省略)

【収録情報】
ニールセン:
交響曲第4番Op.29, FS76『不滅』 (1914-16)
交響曲第5番Op.50, FS.97 (1920-22)

 ロンドン交響楽団
 サー・コリン・デイヴィス
(指揮)
 
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レイチェル・ポッジャーとのデュオでモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ全集を完成させたゲイリー・クーパーハイドンに続くソロ・レコーディング第2弾は、ベートーヴェンのディアベッリ変奏曲!
 ゲイリー・クーパーが弾く楽器は、ディアベッリ変奏曲の作曲、完成(1819、1822-23)とほぼ同時期の1823年にベートーヴェンと同世代のウィーンの名工アントン・ヴァルターによって製作されたフォルテピアノフォルテピアノの修復師で世界有数のコレクターでもあるエドウィン・ベウンクの手により復活した約200歳(!)のフォルテピアノゲイリー・クーパーが奏でるディアベッリ変奏曲が、作曲、製作当時の1820年代に響いた演奏を鮮明に伝えてくれることでしょう!
 相思相愛だったベートーヴェンとアントン・ヴァルターの楽器、そして飛躍を遂げたゲイリー・クーパーのトリオによるディアベッリ変奏曲。演奏、録音ともに各方面から称賛を受けた前作ハイドンを超える名盤の誕生が楽しみです。(東京エムプラス)

【収録情報】
ベートーヴェン
・ディアベッリの主題による33の変奏曲ハ長調Op.120
・6つのバガテルOp.126

 ゲイリー・クーパーフォルテピアノ/アントン・ヴァルター1822)
 
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