Sony MusicS tereo Hybrid DSD direct Recording
福岡県出身でNY在住の世界的ギタリスト吉田次郎の4年ぶりのソニー2作目、通算13作目のソロ名義作。
吉田とクリヤマコト、マリーンのトリオTHREESOMEの2作品と同じく、ソニー・スタジオでのDSDダイレクトレコーディング。プロデューサー杉田元一、録音・マスタリング・エンジニア鈴木浩二の鉄壁の布陣。今作も臨場感抜群の驚異的高音質盤
メンバーは
Vocal: Marlon Saunders(マーロン・サンダース)
Piano: Vana Gierig(ヴァーナー・ギリッグ)
Bass: Carl Carter(カール・カーター)
Drums: 川口千里(カワグチ・センリ)
そしてゲストで1曲(8)歌うマリーン、プロデューサーの杉田元一も(10)トロンボーンで参加
[収録曲]
01. アフロ・ブルー
02. フットプリンツ
03. 男と女
04. チェンジ・ザ・ワールド
05. スモーク・オン・ザ・ウォーター
06. レッド・ライン
07. イマジン
08. ホワッチャ・ゴナ・ドゥ・フォー・ミー
09. グッドバイ・ポークパイ・ハット
10. ウィンター・レイン
THREESOMEの1stを聴いて吉田次郎に惚れ、2ndと遡ってソロ前作と聴いて、その高い音楽性、ギター・テクニック、そして音への拘りに「本物のアーティスト」と絶大にファンになり、そして本作でその思いはますます強いものとなりました。
ジャズ、だけれどもジャズファン以外にも聴いて欲しい
そもそもジャズ・ギターはあまり好みではなかった私がこれほどハマるとは。 それはジャズのジャンルに留まらない、吉田次郎の幅広さにある。
クラシカルでもありフュージョンやロックでもポップでもあり、音楽的バックグラウンドの奥深さを感じさせ、それでいて「さりげない」。テクニックに於いても超絶でありながら「ひけらかし」ではなく、やはり「さりげない」。
音楽的素養の無い、単なる聴き専門、単なる音楽好きにすぎない私にとって、「もっと音楽を知りたい」という知的好奇心を煽られる。今は勿論、5年後10年後に聴いても、新しい発見がある「コストパフォーマンス」に優れたお得感満載。
「超絶テクニカル・ギタリスト」と言うと、とにかく「俺が俺が」な弾きまくりだったりもするが、吉田次郎は全体を見渡してる様に、出る所は出る、引く所は引く、バランス感覚に優れた所も。各メンバーの良さを引き出しそれぞれが活躍する本作でもその感覚が遺憾なく発揮されている。
そして、高音質好きにとっては、その音色への拘り、録音への強い思いを感じさせるところも特筆したい。吉田のつま弾く「一音」に痺れる。だからこそDSD録音SACDで作品をリリースする様になったのは必然であったと思うし、黎明期からDSDに携わってきた杉田元一、鈴木浩二とのタッグはこれ以上無い最高の贈り物だと思います。
Motoichi Sugita Koji Suzuki Jiro Yoshida @ SONY Studio Nogizaka
名曲をJIROに染めながらも原曲の良さを消さず新たな生命を宿す
本作「RED LINE」は ジャズ・スタンダードからポップス・ロックの名曲とオリジナル2曲の構成。
(3)(4)(5)(7)(8)はジャズ・ファン以外にも馴染み深いポップス・ロックの超有名曲。それらが単純なカヴァーではない熟練の、そして大胆なアレンジに唸らされる。ベイビーフェイス、エリック・クラプトンが有名過ぎて、最初は違和感があるかも知れない(4)は、聴き込む毎に良さが染みる。baby if I could~に快感を覚える。国連親善大使(WAFUNIF)を務める(日本人では黒柳徹子と二人だけ)吉田次郎の「世界をよき方向に変えていく努力を続けたい」という真剣な思いが込められている。
あの印象的な冒頭のギター・リフをピアノのヴァ-ナ・ギリッグが奏でる(5)はマーロン・サンダースのブラック・ソウルなヴァーカルが、元ディープパープル(この曲発表時のメンバーではないが)のグレン・ヒューズのソロ「FEEL」の世界観を彷彿とさせ、グレンが演ってもこんな感じだったかも、と面白い。あの曲がこんな曲になるんだと新鮮な気持ち。
(3)(7)はアコーステックでの吉田次郎のソロ。ここでの音色の美しさは耳をそばだてて欲しい。THREESOMEでの「ソー・ホワット」「枯葉」に並ぶ最高の名曲カヴァー。
チャカ・カーンのパワフル・ヴォイスをマリーンのパワフル・ヴォイスでカヴァーかと思いきやの(8)は意外にもウィスパー気味にしっとりと歌う。私は常々マリーンはやや癖がある歌唱で、引いた方が上手さが際立つと思っていたので、こういうアプローチは歓迎。THREESOMEの2ndでも1stに比べしっとり感があったので、マリーンと吉田次郎のコラボのケミストリーだと思う。
原曲がアフリカ民謡の(1)はなるほどマーロンのアフリカン・テイストなアドリブが雰囲気を醸し出してて良い。ギターソロもカッコいい。
私が特にお気に入りなのは、ウェイン・ショーターの(2)。カール・カーターのビンビンのベースソロ、吉田の浮遊感のあるギターに続いてはヴァ-ナの美しいピアノソロがたまらない。ラストは録音時は21歳現役女子大生だった川口千里のパワフルなドラムと吉田の掛け合いでバシッと着地。それぞれの良さが光る。ライブでの拡張にも期待。
チャールス・ミンガスの(9)も同様にバリバリのバンド・サウンド・アレンジに驚かされる。ロック・ファンにはジェフ・ベックのヴァージョンが有名でしょうが、全然違います。名曲をまた違う角度で聴ける、新たな魅力を発見出来るアレンジ力に脱帽。
オリジナルはタイトル・チューンの(6)とラストの(10)。書下ろしの(6)はジャズ・ロックで吉田の超絶技巧が堪能できる。それに呼応するメンバーの技巧、また川口千里はこのベテランメンバーに付いていくだけでも凄いのに、存在感も示す。ベテラン勢も川口の若さに刺激されたのではないかと推測する。今後にも期待が持てる逸材。
ストラヴィンスキー「春の祭典」の様なメロディ、コード、リズムが複雑な曲がやりたかったというこの曲、このメンバーだからこそ、こういう曲を書いたのだろう。複雑だけどマニアックに成りすぎないバランス感覚。プログレ好きにも受ける曲ではないだろうか。
(10)は別れを惜しむかの様な哀愁ナンバー。名曲「スノウ・ダンス」に通じる世界観で、コンポーザーとしても素晴らしいセンス。
全10曲60分強。満足感ともっと聴きたいとが去来する。
本来ならもっと聴き込んでから感想を書きたかったが(一筋縄ではいかない作品だけに)、このアルバムが売れて欲しい、数字は初動が重要なので急ぎました。私の駄文は大した影響力は無いですが、一人にでも伝わると嬉しい。
演奏現場に立ち会ってる様な興奮の臨場感、「聴く」だけでない「体験」を感じさせるSACD
THREESOMEはピアノ、ギター、ヴォーカルのトリオ、前作ソロはベース、ドラムレスで、全く不足感は無いしそれが良かったのですが、ベース、ドラムが大活躍の今作の聴き応えはやはり凄い。
DSD録音は全て良し、とは限らない。しかし、録音の良さ相性の良さのDSD録音は圧倒的に良い。モワァッとした濃い空気感、一発録りの緊張感、DSD録音のSACDならではが詰まっている。CD層はパキッと硬質なメリハリの効いた音でとても良い。空気感が減退する分ちょっと物足りなさは否めないが、スッキリ感はこれはこれで良い。DSDの良い録音はCD層にも有益だ。
一流のメンバーと一流のスタッフ!!
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