VIVA!SACD

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SACDに特化した偏屈ブログ

G.ヘッツェル没後30年企画。 ウィーン・フィルのコンサートマスターとして、多くの名指揮者たちの信頼と敬愛を集めたゲアハルト・ヘッツェルが遺した最後のセッション、3作品を集成

タワーレコード・オリジナル企画盤
オクタヴィア・レコード x TOWER RECORDS

 

ヘッツェル 最後の録音集(1991-92年収録)<タワーレコード限定>
ゲルハルト・ヘッツェル 、 ヘルムート・ドイチュ 、 ウィーン室内合奏団

タワーレコード

 

 

ゲアハルト・ヘッツェルは、名門ウィーン・フィルコンサートマスターとして、多くの名指揮者たちの信頼と敬愛を集め、20年以上もの長きに渡りその座を務めました。ここに収録の3枚は、そのヘッツェルが遺した最後のセッションです。91年暮の室内楽2作品、翌92年、亡くなる半年前のブラームスソナタ。どれも円熟期のヘッツェルが遺した、夕映えのように格調高い畢生の記録です。板倉重雄の新原稿、旧盤すべての解説を再収録SACDハイブリッド盤、2022年江崎友淑による新マスタリング、緑色レーベル仕様などファン必携のセットです。

1992年7月29日、ウィーン・フィルの名コンサートマスター、ゲルハルト・ヘッツェルがザルツブルク近郊のサンクト・ギルゲンで登山中に転落、全身打撲で死去した、というニュースほど、当時の音楽愛好家に衝撃を与えたものはありませんでした。ヘッツェルは1940年4月24日生れで、当時52歳。まさにその芸術が完熟期を迎え、名門オケのコンサートマスターとして、室内楽奏者として、ソリストとして、ますますの活躍が約束されていたからです。音楽家として本能的に手をかばったため頭部と足を強打した、という話もいっそうファンの悲しみを募らせました。この3枚組には、1971年以来、ウィーン室内合奏団のリーダーとして数多くの名盤を録音してきた最後の録音群の2枚、及びソリストとして最後の1枚を集成しました。ここには、先に述べた「完熟期」のヘッツェルの姿が刻み込まれています。

ヘッツェルは歴代のウィーン・フィルコンサートマスター達と同様に、室内楽のリーダーとしての活動を、入団直後の1970年に「ウィーン室内合奏団」を結成して開始しました。当初の第2ヴァイオリンはヴィルヘルム・ヒューブナー(1914~96)、ヴィオラはルドルフ・シュトレング(1915~88)。彼らはボスコフスキー、バリリ、ウェラーと室内楽を共演してきた大ヴェテランで、ヘッツェルは彼らとの演奏を通じて「ウィーンの室内楽」の伝統を体得しました。1971年来日時にトリオ・レコードにLP2枚の初録音を行い、その後も来日の度にヤマハ、ローディ、テイチクへ録音。1972~80年には「ウィーン・フィルハーモニー室内アンサンブル」の名称でドイツ・グラモフォンへLP4枚を録音。1979~80年にはオイロディスクにLP5枚を録音。1991~92年には日本コロムビアがCD4枚を録音。そして、1991年12月に当セットに収められたCD2枚が録音されました。
中でも、モーツァルトクラリネット五重奏曲が「ウィーンの室内楽」の伝統継承と維持・発展を強く印象づけられる演奏となっています。この曲にはウラッハ&ウィーン・コンツェルトハウスによる1951年ウエストミンスター・レーベルへの名盤がありますが、ヘッツェルは、ウラッハの弟子のプリンツとともに同曲を1979年に録音しています。この録音の両端楽章は、その伝統を継承してウラッハ並みにテンポがゆったりと演奏されていましたが、中間楽章が速めのテンポで演奏されたことで、緩急のコントラストの強い演奏となっていました。当セットでの録音は両端楽章のテンポをやや速め、中間楽章のテンポを抑えたために、楽章間のテンポのコントラストが弱められ、より自然な流れを獲得しています。同時に、ウラッハの歴史的名盤と、フレージングやイントネーションの描き方は瓜二つであるものの、ポルタメントやルバートの使用を控えたことで、「ウィーンの室内楽」の伝統を受け継ぎつつも、録音当時年の聴衆の美意識によりマッチした演奏へと昇華させることに成功しています。
一方、唯一のヴァイオリン・ソナタ録音となったブラームスは、ヘッツェルが「どうやら一人前に皆さんに聴かせられる音楽ができるようになってきたようだ」と語ったように、自らの芸術が「完熟期」に入ったことを自覚し、満を持してこの録音に臨み、ピアノのドイチュとともに誠心誠意ブラームスに尽くし、6日間もかけて完成させたものです。追悼盤のようにリリースされたこの録音が大きな話題を呼び、聴衆、批評家双方から絶賛されたことは、彼のこうした姿勢が正しかったことの証明でもありました。

今回の復刻では元々キャニオンクラシックス時代にこれらの録音を手掛けた現オクタヴィア・レコードの平井氏、レコーディング・ディレクターとしてクレジットされている江崎氏両名による最新復刻ですので、当時の雰囲気を十分に残しつつ、最新の機材と技術により高音質化&マスタリングを行いました。まさに最も相応しい布陣による正統的な復刻がされています。ヘッツェルが残した遺産とも言うべき貴重な音源が30年の時を経て、高音質で生まれかわりました。尚、今回の商品でのヘッツェル氏のファーストネームは従来の「ゲルハルト」ではなく、「ゲアハルト」を採用しています。これは、当時の収録時に若林駿介氏から提案があり、ヘッツェル氏本人の了解の上で実際の発音に近い「ゲアハルト」としたとのことでした。今回の復刻ではその経緯を尊重し、商品には初出時の通り「ゲアハルト」表記としています。

今回の解説書は、序文に新規序文解説を、さらに各初出時の解説を掲載しました。音質にも留意し、オリジナルのレコーディングのプロデューサーを務めたオクタヴィア・レコードの代表である江崎友淑氏の手で今回の発売のために新規でマスタリングを行いました。シリアル・ナンバー・シール付の700セット限定でリリースいたします。

【曲目】
<DISC1>
1. ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 K.581
2. ヨハネス・ブラームス:クラリネット五重奏曲 ロ短調 作品115

<DISC2>
3. カール・マリア・フォン・ウェーバー:クラリネット五重奏曲 変ロ長調 作品34
4. フランソワ・ドヴィエンヌ:ファゴット四重奏曲 ハ長調 作品73-1
5. ヴォルフガング・アマデウスモーツァルト:ファゴットとチェロのためのソナタ 変ロ長調 K.292 (196c)

<DISC3>
6. ヨハネス・ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第1番 ト長調 作品78 「雨の歌」
7. ヨハネス・ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第2番 イ長調 作品100
8. ヨハネス・ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 作品108

【演奏者】
ウィーン室内合奏団
ゲアハルト・ヘッツェル(第1ヴァイオリン)[DISC 1&2],(ヴァイオリン)[DISC 3]
ジョゼフ・ヘル(第2ヴァイオリン)[DISC 1&2]
ハット・バイエルレ(ヴィオラ)[DISC 1&2]、
アダルベルト・スコチッチ(チェロ)[DISC 1&2]
ノルベルト・トイブル(クラリネット)[DISC 1&2]
ミヒャエル・ヴェルバ(ファゴット)[DISC 2]
ヘルムート・ドイチュ(ピアノ)[DISC 3]

【録音】
1991年12月15 -19日
ウィーン ショッテン教会にて収録(DISC 1&2)
1992年1月23 -28日
ウィーン カジノ・ツェーゲルニッツにて収録(DISC 3)

【Original Recordings】
Executive Producer: Hiroshi Hirai
Producer, Recording Director:Tomoyoshi Ezaki
Assistant Director:Keiji Shimizu
Recording Engineer:Yukio Kojima (DISC1&2), Robert de Godzinsky (DISC3)
Special thanks to YAMAHA MUSIC, Austria
Supervisor:Shunske Wakabayashi (DISC3)

【マスタリング・エンジニア】
江崎友淑(Tomoyoshi Ezaki)

【原盤】
キャニオンクラシックス