東京でベートーヴェンの交響曲連続演奏会を終えたカラヤンとベルリン・フィルは仙台、北海道を回りました。後にも先にもただ一度きりの両者によるその札幌公演の音がステレオで残されていました。曲はカラヤン十八番のシューベルトの「未完成」とブラームスの交響曲第2番。「未完成」では弱音の緊張感と雄弁さに脱帽、ブラームスは低い重心のドイツ的な響きから、フィナーレの高らかな盛り上がりまでカラヤンの演出の魔術に酔わされます。当時の北海道の音楽ファンの興奮ぶりもリアルに伝わってくる貴重な記録です。
①シューベルト:交響曲第8番ロ短調D.579「未完成」
②ブラームス:交響曲第2番ニ長調Op.73
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1966年4月19日/札幌市民会館(ライヴ)
カラヤンとベルリン・フィルは1966年4月24日に岡山で演奏会を行ないましたが、実業家の大倉總一郎氏の強い希望で実現したとされます。当日の演目は得意としたドヴォルザークの交響曲第8番と、ベルリン・フィルの精妙なアンサンブルが神業的なドビュッシー。ドヴォルザークは変幻自在で、第3楽章の語り口の巧さは絶品。誰もが引きこまれてしまいます。
①ドヴォルザーク:交響曲第8番ト長調Op.88
②ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
③同:交響詩「海」
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1966年4月24日/岡山市民会館(ライヴ)
カラヤンとベルリン・フィルは1966年の来日公演の際、バッハのブランデンブルク協奏曲第6番を披露しましたが、ヴィオラ以下の中低弦楽器のみの地味な音色ながら、むしろベルリン・フィルの均一な音色によりひとつの楽器のようでありながら、半拍ずつ遅れるカノンにより不思議な音響世界を作り出しています。カラヤンのチェンバロも貴重。ブラームスとドヴォルザークもカラヤンの魔術にあふれた凄すぎる演奏。「新世界」は終始堂々と大きな音楽で、曲の素晴らしさをあらためて実感できます。
①J.S.バッハ:ブランデンブルク協奏曲第6番変ロ長調BWV1051
②ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲Op.56a
③ドヴォルザーク:交響曲第9番ホ短調Op.95「新世界より」
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1966年4月26日/松山市民会館①②、4月28日/福岡市民会館③(ライヴ)
モーツァルト: ディヴェルティメント第15番、R.シュトラウス: 英雄の生涯 1966年東京ライヴ
ヘルベルト・フォン・カラヤン 、 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
カラヤン&ベルリン・フィル1966年日本ツアーは5月3日の東京文化会館公演で千秋楽となりました。その時の録音が当ディスク。弦楽とホルンのみのモーツァルトのディヴェルティメント第15番と、大編成のオーケストラによるリヒャルト・シュトラウスの「英雄の生涯」。ことに「英雄の生涯」はツアー最後とあって白熱し、稀代の名演と伝説になりました。コンサートマスターのシュヴァルベのソロも見事で、ベルリン・フィルの名人芸満載で、長大な作品を息もつかせずに聴き通させてくれます。
①モーツァルト:ディヴェルティメント第15番変ロ長調K.287
②リヒャルト・交響詩「英雄の生涯」Op.40
ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音:1966年5月3日/東京文化会館(ライヴ)