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SACDに特化した偏屈ブログ

キャロリン・サンプソンの「狂乱もの」。 女の情念を静かにかつ恐しく再現

 

Reason in Madness

REASON in MADNESS 狂気のなかの正気
キャロリン・サンプソン ジョゼフ・ミドルトン
 
 

★オペラでは「狂乱もの」は名作揃いですが、歌曲でも愛に殉じて狂死もしくは自ら命をたつヒロインを題材としたものがあります。それをまとめた好企画。これまでバッハの宗教作品などで「品行方正」ぶりを示していたサンプソンが、開き直って女の性(さが)を露骨に表現しているのに驚かされます。
★これを十八番にした文豪がシェイクスピア。ことに「ハムレット」のオフェーリアは父を恋人ハムレットに殺され狂乱するさまが有名で、多くの作曲家がとりあげています。ブラームスリヒャルト・シュトラウスの心理描写も流石ながら、サン=サーンスの落ちつきのない伴奏やショーソンの非現実的な美しさがむしろオフェーリアの乙女心を巧みに表現していると申せましょう。
★もうひとりの文豪ゲーテの「ヴィルヘルム・マイスターの修行時代」のミニヨンも、愛するヴィルヘルムが他の女性とキスしているのを見てショック死してしまいます。また「ファウスト」のグレートヒェンも、愛するファウストに会えないあまりわが子を手にかける狂母。フランスのピエール・ルイスの「ビリティスの歌」は、同性愛まで含め愛の遍歴を繰り返す悲しい女性を主人公にし、ドビュッシーやケクランが名曲に仕立てています。
★圧巻はコクトーの詩によるプーランクの「モンテカルロの女」。自殺する女性がひとりで語り続ける狂気のモノローグ劇ですが、女言葉により興奮していくさまは演劇のようで引き込まれます。サンプソンの女優的資質がいかんなく発揮され、女性の悲しさ、怖さを伝えてくれます。キングインターナショナル
 
ブラームス:人々は彼をむき出しの台で運んだ~「5つのオフェーリアの歌」より
シューマン:心の痛みOp.107の1
リヒャルト・シュトラウス:3つのオフェーリアの歌Op.67
④ケクラン:アスタルテの讃歌
ドビュッシー:ビリティスの歌
⑥ケクラン:ビリティスの墓碑銘
⑦デュパルク:ミニヨンのロマンス
⑧ヴォルフ:ミニヨンの歌(全3曲)/君を知るや南の国~「ゲーテ歌曲集」より
シューベルト:糸を紡ぐグレートヒェンD118
ブラームス:乙女の歌Op.107の5
シューマン:糸を紡ぐ女Op.107の4
サン=サーンス:オフェーリアの死
ショーソン:オフェーリアの歌
ブラームス:5つのオフェーリアの歌(全曲)
⑮デュパルク:戦争の起こった国へ
プーランクモンテカルロの女
キャロリン・サンプソン(ソプラノ)、ジョゼフ・ミドルトン(ピアノ)
録音:2018年1月/ポットン・ホール(サフォーク)