b-sharpの自主レーベルからの久々の新作です。
ハイディ・ツァイ
ヨーロッパを中心に活躍する古楽奏者でありフォルテピアノ奏者であるハイディ・ツァイによるベートーヴェンとシューマンの間にはさまれた3人の作曲家のピアノ・ソナタ集。彼女は、アンサンブル「バルセロナ・バロック」を設立、フォルテピアノ奏者としてヨーロッパ各地、上海などで演奏活動を行うほか、2018年現在はフランス在住で後進の指導にもあたっています。本アルバムは、ロマン派初期に作曲されたフンメル、ブルグミュラー、シュンケの3人の作曲家のピアノ・ソナタを収録しています。時代の過渡期にあり現在でこそほとんど知られていないピアノ・ソナタでありますが、ベートーヴェンからシューマンへと続く道に少なからずとも影響を与えた作品群です。ベートーヴェンと同時代に生きたフンメル。ピアニストとして名声をほしいままにしていたフンメルですが、作曲家としてベートーヴェンに大きく引き離されることとなります。しかし、このピアノ・ソナタ第5番についてはベートーヴェンの「ハンマークラヴィーア」を凌駕するような新境地を開いた作品となっています。そして1810年にデュッセルドルフで生まれたノルベルト・ブルグミュラー(教則本で有名なのは兄ヨハン・フリードリヒ・フランツ)は、メンデルスゾーンやシューマン、ショパンらと同世代。幼少より音楽の才能を発揮しましたが、体が弱く26歳という若さでこの世を去っています。シューマンは彼の才能を認めており彼の未完の交響曲を補筆しています。ブルグミュラーがまだ10代の頃に作曲されたピアノ・ソナタ。ベートーヴェンの「熱情」を模範とし、ショパンのピアノ・ソナタ第2番を予感させるような野心的な作品となっています。そしてルートヴィヒ・シュンケ。滞在先のライプツィヒでシューマンと親しくなり、この作品3のピアノ・ソナタはシューマンに捧げられています。シュンケはピアニストとして華々しく活躍していましたが、肺結核にかかり24歳で亡くなっています。17世紀から21世紀まで、そしてチェンバロ、フォルテピアノ、ピアノを巧みに操るハイディ・ツァイならではの好企画盤となっています。
キングインターナショナル
ベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラ ミヒャエル・エルクスレーベン
2015年11月に、ベルリン・コンツェルトハウスでライヴ録音されたベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラによるシェーンベルクとベートーヴェンのアルバム。ベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラの母体であるベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団は、ベルリンのコンツェルトハウを本拠地に1952年設立された名門オーケストラ。2008年にヴァイオリンの日下紗矢子が日本人初の第1コンサートマスターに就任、翌2009年に日下紗矢子とミヒャエル・エルクスレーベンの二人をリーダーとしてベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラが結成されました本録音は、ミヒャエル・エルクスレーベンがコンサートマスターを務めています。本ライヴの演目を決定する際まずシェーンベルクの≪浄められた夜≫が候補にあげられました。シェーンベルクはドイツの詩人リヒェルト・デーメルの詩に魅了され、デーメルの詩に基づく作品をいくつか作曲しています。この≪浄められた夜≫もそのひとつ。そしてカップリングには、≪浄められた夜≫が単一楽章であることから、同じように全7楽章が休みなく連続して演奏されるベートーヴェンの弦楽四重奏曲第14番が選ばれています。エルクスレーベンは、演奏家の使命として完璧な演奏を目指すのではなく、作曲家の元の意図に近づけ「ルーツに戻る」ということに重きをおいたといいます。そしてライヴでは、作品のメッセージを深く掘り下げ、聴衆に作品の醍醐味を伝えることを目標に挑んでいると。しかし、かつての師クルト・ザンデルリングは、厳しいリハーサルの後必ずこう言っていたといいます。「今夜の我々の運命は神に任せるしかない」と。演奏家としての使命と神からの幸運を手にした充実の録音といえるでしょう。
キングインターナショナル
ルーマニア民族舞曲
ベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラ 日下紗矢子
ベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラ 日下紗矢子
ベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラ ミヒャエル・エルクスレーベン